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ホームエンジン基礎編



タイミングベルトとは? 


※タイミングベルトに関する詳しい説明(整備士3級〜2級レベル)をご希望の方は別の
サイトで私が執筆したページがございますのでそちらをご覧下さい。
アイティメディア(モノイスト)
タイミングベルト、まだ使っているの?


タイミングベルトの交換が必要です。」


このような通知を受けた経験がおありの方はどのくらいいらっしゃいますでしょうか?

通常タイミングベルトという部品は10万キロ走行で交換してください。とメーカーが指定しています。


「はいは〜い!じゃあ遠慮なく交換してくださいな!」


と簡単に言える値段では交換ができないのですが、しかし交換をしないと非常に大きなしっぺ返しを
喰らう事になります。
しかし、タイミングベルトの交換のタイミングを間違うと本当に損をすることになります。

タイミングベルト自体は2〜3000円位なのですが、交換作業に多くの時間を費やしますのでどう
しても大きな出費の一つとなってしまいます。
大きな出費だからこそしっかりとした認識が必要です。


維持費削減を実現するにはまず、

『適切な修理依頼ができること!』
 

これが本当に大事です。


ではまず、タイミングベルトという部品がどんな仕事を任されているのか詳しくご説明します。

タイミングベルトの仕事を正しく理解するためには「4ストロークエンジン」の基本的な作動を理解
している必要があります。
4ストロークエンジンを理解できていれば、今回のお話しをスムーズに理解することができるはずです♪

4ストロークエンジンをまだ理解していらっしゃらない方は以下のページで詳しく理解しやすいように
ご説明しておりますので、先にお読みになることを強くお勧めします。

4ストロークエンジンとは? その1+その2 (新しいウインドウで開きます)


それでははじめます。


タイミングベルト
という名前の通り、この部品が何かのタイミングを取っていることは間違いありません。


まずは「吸気行程」における『バルブ』『ピストン』の位置関係をご覧ください。

バルブタイミング例(吸気工程)吸気バルブとピストンの位置に注目!



ピストンが下に移動している時、吸気バルブが飛び出していますよね。

これはピストンの注射器作用によって空気が吸える状態なので、大気とつながって
いる吸気バルブを開いているわけですね。
ピストンが下に動いている時だからこそ、吸気バルブを開く意味があるんですね。
つまり、「バルブとピストン」は息を合わせたコンビネーションが必要なのです。


この時、もし吸気バルブではなく排気バルブが開いていたら???

吸気バルブも排気バルブも閉じていたら???


簡単にイメージできますよね。

排気バルブが開いていたら、排ガスが充満しているマフラーから空気を吸い込む
事になってしまいます。
もちろんガソリンを含んでいないので、爆発は全く起こらずにエンジンが停止
してしまう事になります…。

同じく、吸気バルブと排気バルブが閉じていたらエンジン停止ですよね。


いかに「バルブとピストン」のタイミングコンビネーションが重要かお分かりになると思います。



あ…。



もう皆さんお分かりですよね?



「バルブとピストンのタイミングコンビネーション」


これを取っているのが『タイミングベルト』なんですね!

ではタイミングベルトが実際にどのようにしてタイミングを取っているのか
お話ししていきましょう。


先ほどの「吸気行程」のイラストをもう一度ご覧いただきたいのですが、
今回は吸気バルブがどのようにして押されているかに注目してご覧下さい。


バルブタイミング例(吸気工程)吸気バルブ周辺に注目して下さいね〜


お分かりになりましたか???

バルブが押されるまでの作動の流れを改めてご説明しますと、


1.カムがロッカーアームを押し上げる

2.ロッカーアームがバルブを押す

3.バルブが押し出される



という流れになっていると思います。

ロッカーアームという橋渡し役をしている部品は、まさに「橋渡し」をしている
だけなので大きな影響はありません。

とにかく注目していただきたいのは『カム』です。
バルブは自分自身で飛び出しているわけではありません。
このカムの位置次第でバルブの押し出される量が変わるんです。

更に言えば、カムの位置がバルブの突出量を決めるんですね!


このカムは通称『カムシャフト』と呼ばれる部品に数個付いており、カムシャフト
の末端にはギヤ(カムプーリと呼びます)が付いています。


カムシャフト(カムプーリ)例カムシャフトの例です


このカムシャフトは車ではなく、とあるバイク(fusion)の物です。
車のカムシャフトは長すぎて基本構造が写真で伝わりにくいですので、あえてこれを掲載しています。

当然ですが、カムプーリとカムとは固定されていますので、カムプーリとカムの位置関係は
常に同じ状態です。

もっと言えば、

カムプーリを回すことがカムを回すこと


になります。



カムの話しはいったんここで止めておきますね。

次に、ピストンを中心にしたお話しに移りましょう。

カムと同様に、ピストンにも連動して動く部品があります。

ピストンにはピストンの上下運動を回転運動に変換しているクランクシャフトという部品と、
「コンロッド」と呼ばれるピストンとクランクシャフトとをつないでいる部品があります。


クランクシャフト・ピストン周辺部クランクシャフト・ピストン周辺部です


ピストンは爆発によって下方向へ急降下し、その運動力をクランクシャフトに伝えるのがコンロッドです。
そして伝わってきた力をクランクシャフトは円運動に変換します。
円運動により、強制的にピストンは上昇します。
これを繰り返す事がピストン運動というわけですね。


ここで、先ほどのカムシャフトと同じ考え方が出てきます。

クランクシャフトにもカムシャフト同様のギヤ(クランクプーリと呼びます)があります。
もちろんクランクシャフトとクランクプーリは固定されていますので、

クランクシャフトを回す事がクランクプーリを回す事

になります。


クランクプーリの例クランクプーリの例


さて、今回のお話しの中心に一度振り返って見ましょう。


タイミングベルトとは、

「バルブとピストンのタイミングコンビネーション」

を担っているんですよね!


さて先ほどお話しした部品達に再登場してもらいましょう☆ミ


・『カムプーリ』が回るとカムが回り、カムが回ると『バルブ』が押し出される

・『ピストン』が上下運動する事でクランクシャフトが回り『クランクプーリ』が回る




という事は…。



『クランクプーリとカムプーリを決まった位置で連結させてあげる』


これをする事が「バルブとピストンのタイミングコンビネーション」を実現させる
ために必要不可欠な事なのです!

まさにこの連結に使用されている部品が『タイミングベルト』です!


決まった位置とは4ストロークエンジンの4行程の通りです。

カムプーリとクランクプーリは「ギヤ(歯車)」です。
また、タイミングベルトは歯車に合うようにギザギザを設けています。



タイミングベルトの例タイミングベルトの例


上の写真はタイミングベルトの一例です

一つ一つの山をリブと呼びます。
このリブをカムプーリとクランクプーリの歯車の溝にあわせてつなぎます。

これでお互いが決められた位置関係で連結することになりますよね。

決められたタイミング(位置関係)で各部品が動くからエンジンは正常に動きます。
このタイミングがずれてしまうと4行程がまともに働かなくなるんですね。

タイミングがずれる主な原因というのが

「ベルトの伸び」

です。

エンジンによる強力な力で引っ張られているわけですから、ゴム製であるタイミングベルト
は長年使用することでどうしても伸びたり擦り減ったりします。

擦り減る現象の大部分は、小さなゴミなどを噛み込んでしまう事と急発進などによります。


ベルトが伸びると前述したベストタイミングが狂う事になり、非常によろしくありません。
ちなみに、ベルトが伸びると、キュルキュルという音が発生する場合があります。
(エンジン辺りからこの音が聞こえてきたら点検してもらった方がいいですよ!)

・ちょっと豆知識
⇒エンジンにはタイミングベルト以外に、エアコンや発電機パワーステアリング等を
 駆動するためのベルトもあります。これらはタイミングを取ってませんので、
 タイミングベルトとは呼びません。


多少のベルトの伸びは、エンジン出力が少し低下する程度で済みます。
また、これは気づかない場合がほとんどです。(経年劣化)

しかし、ベルトが伸びたときの最悪の場合を一応お話ししておきます。


カムシャフト(カムプーリ)が2つあるエンジンを例に取りますね。

また、イラストの関係上「プーリ⇒ギヤ」とここでは表現します。(混乱しないで下さいね…)

2つのギヤはお互い50山(歯)あるとしましょう。(左をギヤA、右をギヤBとします)

ギヤAの10山目ギヤBの20山目とがちょうど真上に来る位置が、開発者が苦労して見つけた
ベストタイミングだとします。(例ですよ)

タイミングベルトが伸びた場合タイミングベルトが伸びると…


ここで、タイミングベルトが伸びた事により、ギヤAの山を1つ飛び越えてしまったとしましょう。

するとギヤAが11山目ギヤBは変わらず20山目となってしまい、タイミングがずれてしまいました。

実際にこの現象が起きてしまうと、最悪の場合エンジン終了です。。。

一山くらいであれば少しエンジン性能が低下する程度ですが、一山越えたという事は近いうちにもう一山
越える可能性があるという事。さらにもう一山となると…。


でも皆様ご安心ください。

タイミングベルトが伸びることをちゃんと考慮して、常にタイミングベルトにテンション(張り)を与える
役目をもった部品が取り付けられています。(『オートテンショナ』と言います)

つまり、タイミングベルトのリブがギヤを乗り越える現象が起きるのは、先述したテンショナが壊れて
しまった場合といえます。

でもテンショナという部品が壊れるだけでエンジン終了というのも怖い話しです。

・ちょっと裏話です。
このテンショナという部品は自動でテンション(張り)を行なわない物があります。
 そうなると、テンションの調整は整備士の腕に頼るしかなく、結構ムラがあります。
 テンションが強すぎると、すぐにベルトが伸びてしまったり、エンジンに負担をかけ
 すぎてしまったりします。逆に弱すぎると山を乗り越えてしまったりベルトとプーリ
 との隙間が大きく、通常に比べて磨り減りやすくなります。⇒切れやすい
 テンションの基準がありますが、なかなか基準どおりに調整できないのが現状です。
 ここは整備士の勘に任せる事が多いのです。怖いですね〜。



オートテンショナの例アナログなテンショナの例


また、もっと怖い事実があります。
それは酸化による劣化でゴム製であるタイミングベルトが切れやすくなる事です。

タイミングベルトが切れてしまったら…。

最悪の場合こんなことになります。


タイミングベルトが破損すると…タイミングベルト破損(こうならないように…)


タイミングベルトが切断しても、ピストンは惰性でしばらく動きます。

ピストンが動いてクランクシャフトが回り、その回転力をタイミングベルトがカムプーリに
伝えなければカムシャフトは回りません…。
つまり、吸気行程でタイミングベルトが切れてしまうと、バルブは吸気行程のままで止まり、
ピストンは圧縮行程(上昇)へと移ってしまいます。

イラストを見ていただければ一目瞭然ですが、見事にピストンとバルブが衝突しています。


実際にタイミングベルトが切れてしまい、バルブが思い切り曲がってしまっている写真がありますので
ご覧下さい。
ただし、交換時期を過ぎての使用による故障では無かったようですので参考までに。


切れてしまったタイミングベルト切れてしまったタイミングベルト


見事に切れてしまっていますね。
タイミングベルトのリブ(山)は特に摩耗した形跡がありませんので、交換時期を過ぎた状態で使用を続けた
とは考えにくいです。
となると原因として考えられるのは、オーバーレブ(回転限度を越えた)か先述したタイミングベルトの張り調整
がうまくいっていなかったといった所でしょうか。あくまでも可能性ですが。

そしてこのようにタイミングベルトが切れてしまった事で、バルブがこんな風になっていました。


曲がってしまったバルブ曲がってしまったバルブ


写真の左にあるバルブが曲がった方で、右は正常なバルブです。

ピストンと衝突した事で曲がってしまったのですが、ピストンは特に問題なかったようですね。
不幸中の幸いと言えるでしょう。

こうなってしまうと、修理代はかなりお高く支払う事になります。

上記の例は交換時期に関わる不具合ではありませんが、交換時期を過ぎれば上記のような不具合に
なる可能性が大ですので、タイミングベルトの交換のタイミングを見計らってしっかりと交換しましょう!
もちろん信用できる所で整備してもらいましょうね。

余談になりますが、これほどまでに重要な仕事をタイミングベルトという部品一つに任せているんですよね…。


なんとも怖いお話しですね〜(汗)


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