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ホーム電気装置基礎編



エアコンの冷凍サイクル


自動車整備士3級〜2級レベルの電子装置基礎編として、アイティメディア社が運営しているモノイストというサイトに『今さら聞けない電装部品入門』という内容で記事連載をしております。
当サイトよりも更に高いレベルをお望みの方はこちらもご覧ください。

・第一回 自動車唯一の電源、鉛バッテリの仕組み
・第二回 エコカーとともに進化する鉛バッテリー
・第三回 オルタネータが生み出す電気が無ければ車は走れない
・第四回 激化する燃費戦争、発電だけではなくなったオルタネータの役割
・第五回 大解剖!スターターの仕組み 前編
・第六回 アイドルストップシステムの普及がもたらすスターターの革新 後編
・第七回 エンジン点火に必要な電圧は数万V! イグニッションコイルの役割
・第八回 さらばディストリビューター、点火タイミングは電子制御で最適化する時代に
・第九回 すごいぞスパークプラグ、2000℃に加熱してから急冷して高圧を掛けても壊れない
・第十回 ドライブバイワイヤの生みの親は自動変速機!?
・第十一回 自動ブレーキも横滑り防止装置も、ドライブバイワイヤあってのものだね
・第十二回 エアバッグの前に付く「SRS」の意味を理解しよう
・第十三回 エアバッグが開かないのは衝突安全ボディのせい!?
・第十四回 エアバッグ展開時の衝撃力はウサイン・ボルトの全力タックルと同じ




エアコンの仕組みのページで

「エアコンは注射前のアルコール消毒のス〜ッみたいな物です」

みたいなお話しをしましたが覚えていらっしゃいますか???

更にエアコンは繰り返し使える事が必要となりますので、アルコールの代わりに
使われている冷媒(エアコンガス)を

液体(冷媒)⇒気体(ガス)⇒液体(冷媒)⇒気体(ガス)…

というサイクル(繰り返し)を行っていて、これが「冷凍サイクル」であると
いう部分までお話ししました。

このページではこの冷凍サイクルの仕組みについて詳しくお話ししたいと思います。


まずは一つずつの部品を詳しくご説明する前に、冷凍サイクルの順番(冷媒の流れ)
を部品名称で記載しておきます。
現時点では理解できなくても結構です。(分からなくて当然です)


【コンプレッサ】⇒【コンデンサ】⇒【レシーバ】⇒【エキスパンションバルブ】⇒【エバポレータ】⇒【コンプレッサ】…


エアコンの各部品は「エアコンパイプ」でつながれており、エアコンパイプは一般的にアルミ製か
銅製でできています。
上の冷凍サイクルの順番では「⇒」に当たる部分が基本的にエアコンパイプだとお考え下さい。

それでは一つずつ冷媒の流れに沿って見ていきましょう。

まずはコンプレッサからですね。

コンプレッサはエンジンとベルトでつながっていて、エンジンが回転すると同時に駆動されます。
コンプレッサは小さなエンジンと考えていただいて結構です。
ここではガス状の冷媒(エアコンガス)を圧縮して「高温&高圧のガス」にします。


コンプレッサの例コンプレッサの例


余談になりますが、コンプレッサは「エアコンを使用すると燃費が下がる」という皆様ご存知の大敵の原因です。
エンジンで小型エンジン(コンプレッサ)を駆動するという事になりますので、エンジン出力を走行以外に
使用してしまう事になるのです。
ちなみにエンジンが回転すると同時にベルトによってコンプレッサは駆動される事になりますが、
「電磁クラッチ」というスイッチが設置されていますのでエアコンOFFの時はコンプレッサ内部への
動力伝達が遮断されます。(無駄なパワーロスを防ぐ)
もちろんベルトによってコンプレッサプーリ(ベルトが掛かっている所)は駆動されますが、プーリから
コンプレッサ内部へは動力が伝わりません。
これによって、エアコンを使用していない時の燃費悪化(パワーダウン)を防いでいるという事ですね。


コンプレッサによって高温高圧となったガス状の冷媒は、エアコンパイプを通じて車の前部に取り付けられている
(主にバンパーの裏)コンデンサへと送られます。


エアコン コンデンサの例コンデンサの例


コンデンサはラジエータと重ねて設置されている事が多く、車前方側に設置されているのがコンデンサで
その裏(車両後方、写真では手前側)がラジエータというレイアウトが一般的です。

写真ではラジエータはファンやファンカバー(シュラウド)によって隠れてしまっていますね…。

写っているコンデンサはごく一部であり、本当は写真左側いっぱいまである大きさです。
コンデンサはフロントバンパーに隠れていますので撮影が難しいんです(涙)

車の前方に取り付けられている事もあり、走行風やコンデンサに設けられている冷却ファンによって
高温高圧の冷媒は急激に冷やされて液状冷媒となります。

液状となった冷媒は一度「レシーバ」へと送られ、エアコン機構の大敵である水分やゴミを取り除かれます。


レシーバの例レシーバの例


余談になりますが、レシーバは別名「レシーバ&ドライヤ」と言います。
レシーバに一度冷媒を通す事で、「水分とゴミ」を取り除いてエアコン機構の故障を未然に防ぐ役割をしています。

また、レシーバ最上部には「サイトグラス」という点検窓が設けられており、液状冷媒の
通過状態を目視確認する事が可能です。
これによって(知識と経験が必要ですが)冷媒の量などが把握でき、エアコンの効き具合が
悪い時に冷媒量が正常かどうかを確認する事が可能となります。
何らかの原因で冷媒が漏れてしまって量が減っている時も、このサイトグラスで確認する事が
できますので目に見えない冷媒を確認できるというのは非常に強い味方です。
ちなみにサイトグラスの設置位置は車によって違い、最近はレシーバではなくエアコンパイプ
に取り付けられている事もありますね。

水分やゴミを取り除かれた液状冷媒はそのままエキスパンションバルブへと送られます。


エキスパンションバルブの例エキスパンションバルブの例


エキスパンションバルブはエバポレータのすぐ脇に取り付けられています。
※取り付けられている様子は次のエバポレータのページでご覧いただけます。


エキスパンションバルブの内部構造エキスパンションバルブの内部構造


エキスパンションバルブは液状冷媒を「低温低圧の霧状冷媒」にする役割があります。
簡単なイメージとしては霧吹きです。
今まで通過してきたパイプの径から急に狭くなる事で、液状冷媒が霧吹きで噴射される
ような状態となって霧状冷媒になります。

見ていただければお分かりいただけると思いますが、内部の狭くなっている部分は直径が1〜2mmしかありません。
この部分にゴミが堆積してしまうと正常に霧状冷媒へと変化させる事ができなくなりますので、
必然的にエアコンの効きは悪くなってしまいます。


エキスパンションバルブで霧状にされた冷媒はすぐ側にあるエバポレータへと導かれ、
ここで急激に蒸発することによって周囲から「気化熱」を奪います。
つまりここでアルコール消毒されているわけです(笑)


エバポレータの例エバポレータの例


ご覧のようにエバポレータとエキスパンションバルブは隣接していますね。

エバポレータもコンデンサやラジエータ同様に多くのフィンが取り付けられていますので、非常に放熱性に
優れています。
つまり冷媒を急激に冷却する事が可能となり、気化熱を奪われたエバポレータは氷の塊のようになります。
ここへ室内へ風を送り込む装置であるブロアモータからの送風をエバポレータに当てて室内へ送り込む事で
冷たい空気が送り込まれるのです。

ちなみにエアコン風の臭いの原因として、このエバポレータへのカビ付着やヤニが付いた埃の堆積があります。
エアコンフィルターを交換しても臭いが取れない場合は、エバポレータを綺麗に洗浄しなければ臭いの原因
は無くならないという事です。
とは言っても、かなり奥まった部分にありますので現実的には難しい(工賃が高い)ですが…。


気化熱を奪った霧状冷媒はもちろん蒸発していますので、元のガス状冷媒に戻っています。
そのまま再度コンプレッサへ導かれるというサイクルを繰り返すのです。



エアコンの冷凍サイクル、分かりましたか???



分かりませんよね(爆)



今回の冷凍サイクルを、できるだけ分かりやすく理解していただくために全体の
流れを表現を少し変えて再度ご説明いたします (*Θ_Θ*)/
これで理解していただけなかったら、今回は私の負け(?)です ( -_-)フッ


扇風機の前に氷を置けば、風が冷たくなって気持ちよいというのはご存知だと思いますが、
エアコンも根本的な原理は同じです。

エアコンの場合は氷を用意する事は現実的ではありませんので、蒸発しやすい冷媒という成分を
人為的に「ガス⇒液体⇒霧⇒ガス」というようにコントロールする事で

「エバポレータという擬似的な氷」

を繰り返し作り上げるという事です。

この擬似的な氷に風を送り込んでいる扇風機がブロアモータという事になりますね。


この擬似的な氷を繰り返し作り上げる為に必要になるのがコンプレッサやコンデンサといった複数の部品であり、
はっきり言ってこれらの部品の役割を詳しく覚えておく必要は整備士になろうと思っている人以外必要ありません。

車のユーザーとして知っておきたい豆知識として

「エアコンは氷&扇風機で冷たい風を送っている」

というレベルで十分だと思います。
これだけでも知らない人の方が多い訳ですからね (。・・。)


ちなみに、エアコンの故障って意外と高額な修理になりがちですがその主な理由は

・冷媒は目に見えないガス(漏れを発見する事が非常に困難)

・どれか一つの部品でも故障したら効きが悪くなるので、特定が難しい

・部品自体が奥まった場所に設置されている傾向にあるので、工賃が高い


という感じです。

単純に効きが悪いとなっても、コンプレッサがちゃんと高圧にできていない場合も
ありますしエキスパンションバルブが霧状にできていない場合もありますし、
単純に配管の継ぎ目からガスが漏れている場合もあります。
つまり整備の方法としては「疑わしい部品を順番に交換していく」という手段が主に
行われるわけです。

「それを特定するのか整備士だろ!?」

と言われると返す言葉がないのですが、平均的に見て整備士はエアコン関係に強くありません。
もちろん強い人もたくさんいますが、ガス漏れ以外の診断は勘が頼りになってしまうのです。

理由としては「メカ的ではない」事や、「整備士資格の勉強としてほとんど必要ない」などなど、
原理や特定部品が故障した時の特徴などをしっかりと学ぶ場がほとんど無いんですね。
実際に整備士として働き、様々な事象を見て覚えて

「故障した際に決め手となった故障(修理)箇所」

をデータとして自分で覚えていくしかないのです。


最後は言い訳のような締めくくりになってしまいましたが、車の中で唯一目に見えない
(電気のように情報が溢れていない)強敵ですので、あまり整備士さんを責めないでくださいね(笑)


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