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ホームエンジン基礎編



エンジン始動に必要な3要素


3要素って聞くと、何か難しそうな響きがしますね。

しかしご安心ください。人間が生きていくうえで必要な物に例えれば、

「酸素、水、食料」

とか

「食欲、睡眠欲、●欲」

みたいな物です  (/▽\)きゃー♪


では早速ですが、エンジン始動に必要な3要素を言っちゃいます。


★良い点火

★良い圧縮

★良い混合気



この3つが一つでも欠けるとエンジンはかかりません。
基本的に「エンジンがかからない!」という不具合が発生した時は、これらの
どれかの条件が満たされていないと考えて故障診断を進めていきます。

今の車は複雑な電子制御が徹底的に張り巡らされていますが、エンジン系に関わる部分は
全てこの3要素をいかに効率良く機能させるかという技術です。


NSXタイプRのエンジン♪
NSXタイプRのエンジン♪


写真のエンジンは今回の内容と直接関係はありませんが、国産の量産車でここまで過激に
セッティングされたエンジンは珍しいのであえて載せます。
(個人的に好きだからです)


3要素をしっかりと理解するには、4ストロークエンジンの基本的な作動を
知っていた方が分かりやすいと思いますので、自信が無い方はこちらから
予習しておきましょうね♪

4ストロークエンジンとは? その1
4ストロークエンジンとは? その2

では一つずつ説明していきます。


【良い点火】

これはつまり、スパークプラグから混合気に点火できる強さをもった火花
飛んでいるかどうかです。

参考ページ:スパークプラグ


火花が飛んでいるかどうかだけで判断できれば、とても分かりやすくて良い条件ですよね。
しかし現実はそんなに甘くありません。

「混合気に点火できる強さをもった火花」とあえて表現している事から察して
いただければと思いますが、それなりに強い火花が飛ばなければ混合気に
点火する事ができません。

ここを詳しくお話しすると非常にマニアックになるので簡略化しますが、私達が普段生活している
大気圧であれば、「プラグの火花チェック」というメカニックが頻繁に行う点検方法を行うと
完全にプラグが死んでいない限り普通に火花が飛びます。
※火花チェック方法は、またメンテナンス基礎編などでコンテンツ化します!

しかし実際にはエンジンの高圧縮&超高温の環境下で火花が飛ぶ必要があります。

そもそも「火花」というのは電気の放電現象です。

電気は銅などの金属を電流として流れるのは何となくご存知だと思いますが、プラグの放電は
行き場を失った高電圧(20000V前後)な電気が1mmほどの隙間※(空気の層)を流れる現象です。
※プラグギャップと言います。


プラグギャップ
プラグギャップ


一般的には大気中は「絶縁」であり、電気が流れないという認識があると思いますが、
雷も一種の放電だと思えば実は絶縁ではないという事を納得していただけると思います。

雷の場合は1億ボルト?とか意味不明な単位ですが、発生源の雲と地面との間にある空気を
電流として電気が流れる現象という事です。
ただし雷の場合は数千メートルの空気の層を流れますが、プラグの場合は1mm前後です。

一体何の解説をしているのか分からなくなってきましたが(笑)、言いたい事はここからです。

エンジン内の高圧縮環境というのは、空気の分子がギュウギュウに圧縮された状態ですので、
電気(電子)が通れる隙間が少ないと考えてください。

ああ、ますます難しくなってしまった…。


(ー'`ー;) う〜ん


「エンジン内で火花を飛ばすのは非常に難しい!」


という事で許してください (-_-;)


これを踏まえますと、大気中で「良い火花」かどうかを確認するためには敢えて厳しい条件を
与えて火花チェックをする必要があるのです。
詳細は後日UP予定の火花チェックの方法でお話しします。


とは言っても、「大気中で火花が飛んでいるのにエンジン内で点火できない」と言った事象は滅多に
ありませんので「可能性」としてそういう事もある事を頭の片隅に置いておく必要がある程度です。
この場合、スパークプラグの劣化やプラグコードの劣化によって火花の力が無くなっている事が
ほとんどです。


また「良い点火」というのは火花だけでなく他の観点でも見る必要があります。

それは「点火タイミング」です。

問題なく強い火花が飛んでいるけど、ピストンが混合気を圧縮したベストタイミングで火花を
飛ばさなければ燃える物も燃えませんよね。

参考ページ:ピストン(シリンダの写真あり)


火花を野球の強打者、ピストンをピッチャーだと置き換えれば分かりやすいのではないでしょうか?

つまりどれだけ凄い強打者でも、ピッチャーが投げてきたボール(ピストン)にうまくタイミングを合わせて
バット(火花)を振らなければボールは飛びませんよね。
タイミングがほんの少し早かったり遅かったりすると、ファールになったり内野ゴロになってしまいます。
もちろん点火タイミングも同じで、早すぎても遅すぎても爆発しなかったり爆発しても本来のパワーを
得られずにエンジン不調や異音の原因となります。

最近の車は点火タイミングが簡単には調整できないようになってきていますが、一昔前の車は
整備士の意思一つで点火タイミングを調整できました。
というか、走行距離がそこそこになると点火タイミングを調整しなければ調子が悪くなった時代もあります。
電子制御が進んだ今の車ではほとんど見かけない光景になりましたが、そういったアナログな技術こそ
「メカニック」という感じがして個人的には無くなって欲しくない職人の世界なんですけどね。


少し話しが散らかって難しくなってしまいましたが、要は

・強い火花
・ベストなタイミングで火花が飛ぶ

これが「良い点火」の条件です。


では次に
【良い圧縮】ですね。

これは今までメルマガや私のサイトをご覧になっていただいている方なら
ピンと来るかもしれませんね。

要は「ピストンがしっかりと混合気を圧縮できているか?」という事です。


「ピストンが動けば必然的に混合気を圧縮するのでは?」


と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそうではありません。

暖機が完了していない状態での急発進や、オイル交換をずっとしていなかったエンジン、
走行距離がかなり進んでいるエンジンなどはシリンダ内に傷が付いている事がよくあります。

もちろん、ピストンの圧縮を助ける為に存在しているピストンリングの状態が良い事も
良い圧縮をするために必要不可欠な条件です。

参考ページ:ピストンリング(ピストン、シリンダの写真あり)


ピストンやシリンダはとてもデリケートな部品ですので、ちょっとした線傷があるだけでも
圧縮が漏れてパワーダウンにつながります。
このパワーダウンだけならエンジン始動にさほど影響しませんが、傷の深さによっては
パワーダウンどころの騒ぎではおさまらなくなるのです。
このような線傷をかなり埋めてくれるのが私が常々お勧めしているオイールですので、
「良い圧縮」という要素を知ればますます良さを分かっていただけるのでは?と思います (^ー^* )


3要素の中でも、この「良い圧縮」がNGの場合が一番厄介です。
それもそのはず、エンジン内部の問題ですので簡単には直りません。
その代わり、いきなりエンジン始動不能となるような傷が付く事はほとんどありませんので、
「始動不良の原因になるまでに時間がかかる」というのも特徴の一つでしょう。


●最近パワーが出てないような気がする

●エンジンのかかりが悪い

という場合、この「良い圧縮」が「いまいちな圧縮」になっている可能性がありますね。

ただし故障頻度や手間などを考えると、圧縮を疑うのは一般的に最後になります。
手軽に確認できる点火と混合気の可能性が無いと判断したら、やむなく圧縮を疑うという流れですね。

シリンダやピストンに傷が入って圧縮が抜けているかどうかは、エンジンを分解してみないと
分からないのかと言えばそうではありません。
ちゃんと「圧縮の力」を測定する特殊工具※がありますので、確認するためにわざわざ分解する事は
ありませんのでご安心を。 
※コンプレッションゲージ



では最後に
【良い混合気】にいきましょう。

混合気というだけあって、「ガソリンと空気が混ざったもの」というイメージをされると思いますが…。


それで間違いありません(笑)


ただ、「ガソリンと空気」の比率に関しては適当では駄目です。
だからこそ「良い混合気」という表現になるわけです。

一般的に、ガソリンと空気の比率で一番効率が良いとされている

『理論空燃費』

という物があります。つまり「良い混合気」の理想的な姿ですね。

数値にすると、「空気:ガソリン⇒約15:1」と言われています。

ただこれはあくまでも理想であって、様々な運転状況によって条件が変化している事を考えれば、
空燃費はかなり前後しています。

例えば今回の題材である「エンジン始動時」では、かなりガソリンの比率が高い状態(濃い)に
設定されています。
またアイドリング時などでは、最近の技術進化によって極限までガソリンの比率を低い状態(薄い)
にしており、従来ではとても爆発しないと言われていたレベルまで薄くしています。

などなど、あくまでも理論空燃費は空気とガソリンとを混ぜた時に一番パワーを得ることができる
「理想値」でしかありません。

燃費重視になっている昨今を考えれば、理論空燃費より薄い状態が多く設定されている事もうなずけます。


さて実際に3要素としての観点で「良い混合気」を考えてみましょう。

今の車は「フューエルインジェクション(FI)」という燃料噴射装置によってガソリンをエンジン内に
供給していますので、これをベースにお話しします。
※キャブレータの説明は混乱を招きますので省略します。


フューエルインジェクションは、別名「電子制御燃料噴射装置」と言われ、車のあらゆる部位に
設置された「センサー」からの情報を集めて最適なガソリン噴射量(空燃費)をベストタイミングで
噴射するとても優れた装置です。

これが導入されてから、混合気に関する不具合は激減しました。

それもそのはず、ガソリン噴射量を決定するまでの情報量がとても多く、ある意味で

「その瞬間の理論空燃費」

を算出できるからです。

おっと…。少し難しくなってきましたがもう少し頑張ってください(汗)

つまり、

・外気温は何度か?
・何キロで走っているか?
・アクセルはどれくらい踏んでいるか?(求めている出力が分かります)
・吸い込んだ空気の量は?
・水温は何度か?
・エンジン回転数は?
・ピストンの位置は?

などなど、上げていればキリが無いほどの情報がECU(制御コンピュータ)に伝達されて
それを元に瞬時にガソリンの量を決めているのです。

もちろんあらゆる条件下でエンジンが停止してしまわないように制御しますので、ガソリンが
足りなくなってエンストしそうになれば瞬時にガソリンを大量に噴射して踏みとどまります。

と言ったように、非常にすぐれた装置が「良い混合気」という要素を支えています。

それでも不具合を生じるのは『制御装置(各センサー含む)の不具合』が原因である事がほとんどです。

電気部品からの情報で構成されている装置といっても過言ではありませんので、
電気部品(センサーなど)が故障すれば見事に混合気に影響します。

これらのセンサーが壊れると交換するしかありませんので、

「調子が悪いようなので調整しておきます」

という整備士の醍醐味みたいな部分が無くなっているのも事実ですが…。


大半が電気部品という事もあって、故障した時にすぐに知らせてくれるシステムが事前に
組み込まれているのも特徴の一つですね。

その警告システムの一例がエンジンチェックランプです。

エンジンチェックランプ
エンジンチェックランプ

※大気汚染の観点等から、排ガス基準を満たさない状態と認識した時点で必ず運転手に知らせる規定があり、
 その手段がメーター内で点灯するエンジンチェックランプです。


もちろん専用の機械を車に接続する事で、どのセンサーが壊れているかも一発で分かります。
便利といえば便利ですが、整備士じゃなくても診断できるようになっているのはちょっと淋しいですねぇ(涙)


まとめますと、電子制御燃料噴射装置を採用している車であれば

「センサー類が正常であれば、良い混合気が出ていると判断できる」

と言っても過言ではないという事です。


それでも混合気に不具合が発生するとすれば、

・ガソリンを供給している「燃料ポンプ」の不具合
・噴射装置の目詰まり
・吸排気装置(エアクリーナやマフラー)の不具合
・ガソリンの劣化(長期保管)

などが考えられますね。

※これらの不具合を警告灯等で知らせてくれるシステムが組み込まれている車種もあります。


実は『エンジンを始動する』という事は様々な条件が整っていてはじめて為しえる事なのです。
一度始動してしまえば惰性で何とか回転を続ける事ができたりするのですが、停止状態からの
始動は意外と難しい事です。

今日お話しした3要素を踏まえて、次はスタータを回してから各部品がどのような働きをして
エンジン始動をしているかお話ししますね♪




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